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巧妙化する管理組合預金の横領・着服 その防衛法とは?

2012 1/4

 

 

マグニチュード9.0という未曾有の大震災に見舞われ、販売自粛を余儀なくされた分譲マンション市場。しかし、販売を再開してみると即日完売するマンションも散見され、消費者の購買意欲は震災後も堅調に推移していることが分かった。液状化被害によって一時は黄色信号が灯った湾岸のタワーマンション人気が、再び高まっていることが要因の1つと考えられる。ランドマークとしてのスケール感や共用施設の充実度が多くの人を魅了してやまない。

 

 しかし近ごろ、こうした大規模マンションの共用施設で利用料金(小口現金)を着服する事件が相次いでいる。たとえば、2010年3月には業界大手の東急コミュニティーが、「同社の社員が管理組合の小口現金収入を着服していた事実が判明した」として謝罪報告をしている。管理事務所で収受した現金が入金処理されていないことが首都圏管轄の複数のマンションで明らかになり、社内調査の結果、担当者3名による着服・私的流用が発覚した。その被害額は総額で約360万円にのぼる。

 

 ここで言う小口現金とは、共用施設の利用料金のことを指す。たとえばマンション内のゲストルームを利用した場合、1泊あたりの宿泊料が必要になる。こうした利用料は予約時や宿泊後に現金の授受によって精算されるため、受託管理会社の担当者がゲストルームの利用者から直接、利用料を預かり、担当者自ら入金処理をする。ところが、この入金処理を怠り、自分のポケットに入れてしまうのが小口現金の着服だ。ゲストルームであれば宿泊履歴が残るので、未入金があれば不正に気付くのだが、フィットネスジムやプールなど、1日に多くの人が利用する施設では追跡は困難となる。こうした盲点を逆手に取り、一部の愚か者が人目を盗んで小口現金を私的流用している。

 

 管理組合にとってはたまったものではないが、実は、被害額360万円が「大した金額ではない」と感じさせる大胆な犯行に手を染める者もいる。昨年11月、マンション管理業を手がける東証一部上場「太平洋興発」(東京都台東区)の元契約社員が詐欺容疑で逮捕された。報道によると2010年4月、東京・港区内のマンションで管理組合の理事長をだまし、修繕積立金を詐取したというのだ。だまし取った額は合計7000万円にのぼり、本人も「競馬などに使った」と容疑を認めている。

 

 幸い、太平洋興発は元従業員によって着服された預金を全額、該当する管理組合に返金するとしており、管理組合は金銭的損失を免れることができた。しかし、だまされた衝撃は計り知れず、組合運営に禍根を残したことは間違いない。だますほうが悪いのは当然だが、だまされたほうにも落ち度があったことは否定できないからだ。こうした被害は全国で頻発しており、すべての管理組合が被害者となる危険をはらむ。「自分のマンションは絶対に心配ない」と胸を張って言える住民がどれだけいるか――。組合預金の横領は、それほど身近で切実な問題なのだ。そこで、自宅マンションが被害に遭わないためにはどうすればいいのか、本コラムでそのノウハウを紹介する。

 

わざわざ新規口座を開設させ、迂回して組合預金を詐取する巧妙な手口

 

 まずは、前述した太平洋興発の元従業員による不正がどのように行われたのか、その手口を見てみることにしよう。だましの手口を知ることで、防衛策の立案にも役立つ。

 

 元従業員は「組合の口座を増やす必要があるので、銀行届け出印を用意してほしい」と嘘をつき、組合名義の新規口座を開設させた。そして、いったん新設した口座に預金を移動させた後、またしても理事長をだまし、今度は“押印済み”の新設口座の払い出し伝票を準備させ、その伝票を使って組合預金を自分名義の口座に再度、移し変えて詐取・着服した。

 

 わざわざ新しい組合名義の口座を開設させ、ダイレクトに自分名義の口座に預金を移動させない用心深さに犯行の計画性が感じられる。おそらく、たとえ元の口座の残高が減っていても、「新しい口座に預金を移動した」という理由付けが可能になることで、管理組合を安心させる説得材料にしようと考えたのだろう。会計業務を請け負い、内部事情を掌握している管理会社の従業員だからこそ思いつくだましの手口だ。

 

 こうした詐取の手口は今般さらなる巧妙さを増しており、沖縄県のある被害マンションでは、実在しない架空の支出(カラ伝票)を管理組合に決裁させ、預金を引き出していた。さらに、発覚を逃れるため管理組合に提出する残高証明書を偽造し、偽の書類に印鑑を押させるなどして管理組合をあざむいていた。正直、ここまで手が込んでくると不正を見抜くのは極めて困難だ。会計知識が十分にない管理組合の役員にとっては、もはやお手上げといわざるを得ない。

 

「分別管理の徹底」と「チェック体制の重層化」で組合預金は守れる

 

 そこで防衛策が必要になるわけだが、筆者は「分別管理の徹底」と「チェック体制の重層化」が最重要と考えている。さらに管理組合が一定の会計知識を身に付けてくれれば、さらに心強い。

 

 分別管理の徹底とは、通帳と印鑑をきちんと分別して管理することを意味する。組合名義の口座から預金を引き出そうとした場合、組合名義の通帳と印鑑がセットで手元になければ預金は引き出せない。つまり、通帳と印鑑を分別して管理していれば、おのずと不正な引き出しは防げる。口座が複数ある場合には数名の役員で分散管理すると効果的だ。特定の役員が1人で保管し続けると、魔がさしてその役員が愚行に手を染める心配があるからだ。分別管理を徹底させておくと内部犯行を防止するのにも役立つ。下記のような表を作成し、“見える化”しておくとより安心だ。

 

管理組合の通帳と印鑑 口座名義および保管者の一覧表(一例)
? 収納口座 管理費の
保管口座 修繕積立金の
保管口座
口座名義 管理組合
(理事長) ? ○ ○
管理会社 ○ ? ?
その他
(収納代行業者など) ? ? ?
通帳・印鑑など
の保管者 通帳 管理会社 管理組合 管理組合
印鑑 管理会社 管理組合 管理組合
その他
(キャッシュカードなど) ? ? ?

 

 

 しかし、太平洋興発のケースのように印鑑を管理する理事長が言葉巧みにだまされ、払い出し伝票に押印させられては手の施しようがない。そこで、出納時のチェック体制を重層化し、こうした事態に陥らない仕組みを構築することが必要になる。

 

 具体的には会計担当理事と理事長による二重体制にプラスして、会計知識のあるもう1人を加えた三重体制にするといい。たいがい大規模マンションであれば、1人や2人は会計に明るい人が住んでいるものだ。会計士やマンション管理士がいれば理想的だが、勤務先で経理を担当している人でもかまわない。さっそく声がけしてみよう。それでも適任者が見つからない場合には、外部の会計専門業者に監査を依頼するのも一法だ。費用は発生するが、マンション会計を専門とするコンサルティング会社もあるので相談してみるといいだろう。

 

 そして、重層化したチェック体制のもと、管理組合の「月次決算」と「年次決算」の検証を厳格に実施する。月次と年次を比較し、各項目の数字に不整合が見つかると不正の兆候となる。特に、多額の現金が預金されている修繕積立金の保管口座には力点を置いて整合性の検証をしてほしい。

 

 ただでさえ多くのマンションで修繕積立金が不足しているなか、その預金を詐取されては目も当てられない。管理組合の財産が潤沢にあろうが不足しようが、すべて管理組合の責任となる。自己防衛を徹底し、不正のない健全なマンション会計の実現に尽力してほしいと思う。

 

 

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2012年1月4日 巧妙化する管理組合の横領関連ページ

2012年1月5日 日経新聞から
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